条件

民法総則条件・期限

条件とは

条件とは、法律行為の効力の発生または消滅を将来発生するかどうか不確実な事実にかからせる特約をいう。

条件には、停止条件と解除条件の2種類がある。

条件の成就(条件事実の発生)によって法律行為の効力が発生する場合が停止条件であり、条件の成就によって法律行為の効力が消滅する場合が解除条件である(127条参照)。 

条件となる事実は、将来の成否が不確実な事実にかぎられる。将来発生することが確実な事実は、期限として扱われる。

条件に親しまない行為

法律行為に条件を付けることは、原則として当事者の自由である。

しかし、条件は法律効果の発生・存続を不安定なものにするため、効力を確定する必要がある行為に条件を付けることは許されない。そのような法律行為を条件に親しまない行為という。

条件に親しまない行為には、①婚姻や養子縁組、認知、相続の承認・放棄のような行為(主に身分行為)と、②取消し、追認、相殺などの相手方のある単独行為(相殺につき、506条1項)の2種類がある*⁑。

* ①は条件を付けることが強行規定または公序良俗に反する場合であり(公益上の禁止)、②は条件を付けることが相手方の地位を著しく不安定にする場合である(私益上の禁止)。
⁑ 単独行為は、相手方の同意があるか、または相手方を不当に不利にしないかぎり、条件を付けることが許される(例、相手方の債務不履行を停止条件とする解除の意思表示)。

条件成就・不成就の効果

条件の成否が確定すると、条件付法律行為の効力が確定する。

停止条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力を生じ(127条1項)、条件が不成就に確定することによって確定的に無効となる

解除条件付法律行為は、条件が成就した時からその効力が消滅し(同条2項)、条件が不成就に確定することによって確定的に有効となる

条件成就条件不成就
停止条件効力発生無効に確定
解除条件効力消滅有効に確定
条件成就・不成就

条件成就の効果は成就の時から生じ、原則として遡及しない。ただし、当事者の意思表示によって条件成就の効果をその成就前にさかのぼらせることが可能である(同条3項)。

条件付権利

条件の成否が未定である間は、条件付法律行為の当事者の一方は、条件の成就によって一定の利益を受けるという期待を有する*。民法はこのような期待を一種の権利として保護しており、これを条件付権利と呼ぶ。期待権の一種である。

* たとえば、停止条件付贈与契約における受贈者は、条件の成就により贈与を受けることができるという期待を有する。

条件付法律行為の当事者は、条件の成否が未定である間は、相手方(条件付権利者)の利益を害することができない(128条)*。第三者が条件付権利を侵害した場合は、不法行為が成立しうる。

* たとえば、停止条件付贈与契約の贈与者が目的物を滅失させてしまったために将来の履行が不可能となった場合、贈与者は受贈者(条件付権利者)に対して条件付きの損害賠償責任を負う。

条件付権利は、一般の規定に従って、処分、相続、保存ができ、また、これに担保を供することができる(129条)。

条件成就・不成就の擬制

条件の成就によって不利益を受ける者が故意に条件の成就を妨げた場合、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる(130条1項)。

AがBに取引の仲介を依頼し、仲介により取引が成立すれば報酬を支払うと約束したところ、Aは、Bが見つけた相手方Cと直接取引することによって故意に仲介による取引の成立を妨害した。このときBは、仲介による取引が成立しなくても、Aに対して報酬を請求することができる。

条件の成就によって利益を受ける者が不正に﹅﹅﹅条件を成就させた場合、相手方は条件が成就しなかったものとみなすことができる(同条2項)。

AB間で一定事項に違反すると違約金を支払う旨の和解を締結したところ、Aが他人に指示してBの違反を誘発させた。このときBは、違反がなかったものとみなすことができる。

特殊な条件

条件付法律行為の効力も法律行為の一般原則に従うが、民法は特殊な条件の効力について若干の規定を置いている(131条~134条)。

既成条件

既成条件とは、法律行為当時すでに成否が確定している条件をいう。これは本来の条件ではなく、既成条件が付いた法律行為の効力は行為の時にすでに確定しているものとして扱われる。

すなわち、条件が行為時すでに成就していた場合、その条件が停止条件であるときは法律行為は無条件となり、解除条件であるときは法律行為は無効となる(131条1項)。

逆に、条件が成就しないことが行為時すでに確定していた場合、その条件が停止条件であるときは法律行為は無効となり、解除条件であるときは法律行為は無条件となる(同条2項)。

条件がすでに成就条件不成就がすでに確定
停止条件無条件無効
解除条件無効無条件
既成条件

不法条件

不法な条件を付けた法律行為は、無効である。不法な行為をしないことを条件とする法律行為も、無効である(132条)*。

* たとえば、「人を殺したら報酬を与える」という契約や、「人を殺さなかったら全財産を与える」という契約は、無効である。

もっとも、民法132条が適用されるのは、条件を付けることによって法律行為全体が不法性を帯びる場合にかぎられる*。

* たとえば、「損害を与えたら一定の金額を支払う」という契約や、「不倫関係を止めたら手切金を与える」という契約は、その全体が不法性を帯びるとはいえないので、有効である。

不能条件

不能条件とは、社会通念上その実現が不可能な条件をいう*。

* 「もし死人が生き返ったら…」のような類。

不能の停止条件を付けた法律行為は無効であり(133条1項)、不能の解除条件を付けた法律行為は無条件の法律行為となる(同条2項)。

随意条件

随意条件(純粋随意条件)とは、条件の成就が一方当事者の意味だけにかかっている停止条件をいう。たとえば、「気が向いたら借りた金を返済する」という条件がこれに当たる。

債務者の意味だけにかかる停止条件が付いた法律行為は、無効である(134条)。当事者間に法的拘束力を生じさせる意思がないものと認められるからである。

随意条件に対し、債権者の意思だけにかかる条件が付いた法律行為(大判大7.2.14)や、債務者の意思だけにかかる解除条件が付いた法律行為は有効である。

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